2人きりの空間

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「1人で食ってねーで俺にも食わせてくれ」 俺は焼くのを中断したくなり言った。 「何だぁ、早く言ってくれたら良かったのに…」 香澄の言葉に俺は焼く前の肉と野菜が乗った皿を渡そうとした。 ところが。 「はい、あーんして」 香澄は自分がタレに漬けた肉を箸で俺に差し出している。 そういう意味で言ったんじゃねーんだが、香澄のなら、まあ、良いや。 俺は目の前のタレが絡んだウェルダンに焼かれた肉の誘惑に負け、口を開けた。 そしてパクッと肉を食う。 …美味い。 香澄は絶妙なタイミングで肉を焼いたのを取っていたんだな。 意図せず香澄と間接キスをした事になるが今更って気もする。 結局、俺は焼き続けながら、香澄から時々肉や野菜を食わせてもらう事になった。 そして、チーズケーキを目の前にした香澄は、その大きな目を輝かせていた。 俺もチーズケーキは久々だ。 「いっただっきまーす!」 「俺も食うかな」 2人でしばしチーズケーキを無言で食う。 香澄はすげー幸せそうな顔をしている。 自分で作っておいて何だが、確かに美味い。 「千夜くんからのご褒美、とっても嬉しいわ」 そう言うと香澄は早くも一切れ目を食い終わった。 そして2切れ目に手を伸ばす。 「香澄、太るぞ」 俺が揶揄いたくなり、ニヤリと笑ってそう言うと香澄の手はゔっと言う様に止まった。
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