11人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
手紙を書くのは正直気が進まねーが、日記を書く位の香澄にとっては、俺が手紙を書くのを当然だと思ってる節がある。
何で知りもしねー女共に手紙なんざ書いてやらなきゃならねーんだ?!
何て書きゃー良いのか、ちっともわかんねー。
「たってなあ…俺、手紙なんざ書いたことねーぜ」
「良い機会じゃない。鈴木くんだって毎年書いているみたいなんだから。さっ!行きましょ!こっちよ」
そう言って香澄が歩き出したから、俺は慌ててバイクを引いてついて行った。
秀才の鈴木と同じにされてもな…。
まあ、先ずは残ってるチョコレートをどうするかが問題だ。
それこそ山村あたりに寄越したらスゲー喜びそうな気もするけどな。
そう思いながら香澄について行った。
閑静な住宅地を香澄は迷う事なく歩いて行く。と、一際デケー家が見えてきた。
確か香澄や鈴木は、山村ん家が豪邸みてーにデカくて広いっつー話だったが、まさか…。
「ここよ」
俺の予感通り、そのデケー家の門の前で香澄は立ち止まった。
マジか…。
表札にも確かに『山村』と書かれている。
香澄は自分の鞄から黄色いラッピング用紙に包んだチョコレートを取り出すと、デカそうな郵便受けにカタンと入れた。
エコバッグに残っているチョコレートも幾つか入るんじゃねーかとも思ったが、香澄が承知しねーだろうな。
最初のコメントを投稿しよう!