バレンタインデー

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手紙を書くのは正直気が進まねーが、日記を書く位の香澄にとっては、俺が手紙を書くのを当然だと思ってる節がある。 何で知りもしねー女共に手紙なんざ書いてやらなきゃならねーんだ?! 何て書きゃー良いのか、ちっともわかんねー。 「たってなあ…俺、手紙なんざ書いたことねーぜ」 「良い機会じゃない。鈴木くんだって毎年書いているみたいなんだから。さっ!行きましょ!こっちよ」 そう言って香澄が歩き出したから、俺は慌ててバイクを引いてついて行った。 秀才の鈴木と同じにされてもな…。 まあ、先ずは残ってるチョコレートをどうするかが問題だ。 それこそ山村あたりに寄越したらスゲー喜びそうな気もするけどな。 そう思いながら香澄について行った。 閑静な住宅地を香澄は迷う事なく歩いて行く。と、一際デケー家が見えてきた。 確か香澄や鈴木は、山村ん家が豪邸みてーにデカくて広いっつー話だったが、まさか…。 「ここよ」 俺の予感通り、そのデケー家の門の前で香澄は立ち止まった。 マジか…。 表札にも確かに『山村』と書かれている。 香澄は自分の鞄から黄色いラッピング用紙に包んだチョコレートを取り出すと、デカそうな郵便受けにカタンと入れた。 エコバッグに残っているチョコレートも幾つか入るんじゃねーかとも思ったが、香澄が承知しねーだろうな。
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