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「これで良し!っと。じゃあ、帰りましょう?」
「じゃあ、バイクに乗ってこーぜ」
俺は香澄にメットを差し出すが受け取られなかった。
「チョコレートの量、下駄箱で見た時より減ってない?」
俺は怪訝そうな香澄に、校門前の出来事を話した。
「それならバイクに乗って帰ると…」
「帰ると?」
香澄は俯き加減で言いづらそうに言う。
「古屋敷に着く頃にはエコバッグの中のチョコが無くなっちゃうわ」
香澄…そこまで他の女共の気持ちを気にしてたのか。
まあ寧ろ引いて帰った方が長く香澄と寄り添い歩ける。
「わーった。歩いて帰ろうぜ」
「ええ!…千夜くん、腕組んでも良い?」
「ああ。彼女なんだからな。いちいち俺の許可は取らなくて良いぞ」
「ありがとう、千夜くん」
そう言うと香澄はバイクを引く俺の腕に自分の手を組んできた。
コート越しでも香澄の手が冷たくなっているのがわかる。
「夕飯は、あったけー鍋にすっか?」
「美味しそう!私、すき焼きが食べたいわ」
「決まりだな」
冷蔵庫には確か…牛肉、白菜、卵に春菊…野菜が他にもあった気がした。
それから、香澄から手作りチョコレートが貰える筈だ。
俺と香澄は互いに互いの体温を感じながら古屋敷への帰路に着いた。
「千夜くん!これ山村先輩に教わりながら作ったの。受け取ってください!」
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