11人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
「熱、8度3分もあるじゃない!今日は学園は休んで横になっていた方が良いわ!」
「香澄…朝飯なら昨夜の残りが冷蔵庫にあっから…」
「わかったわ。喉が乾いているみたいだから、余り喋らない方が良いわよ?帰りにコンビニからレトルトのお粥沢山買ってくるから!」
そう言いながら寝室を出て行った香澄は、次に来た時は水とストローの入ったコップとヨーグルトの容器を乗せたトレーを両手で持って来た。
「とりあえず、冷蔵庫に入っていて、食べれそうなの持って来たわ」
俺は枕元にトレーが置かれたところで、ストローで水をひと口飲んだ。
「香澄…俺に余り構うな…。受験勉強の邪魔になる…」
「大丈夫よ。勉強の時間も確保するから。それよりも私、もう行く準備始めるけど、きちんと寝てなきゃダメよ?」
香澄はそう言うと、寝室の襖を閉めて出て行った。
香澄は今は大事な時期だ。
俺の風邪?が移らねーと良いんだけどよ。
明日になっても熱が下がらなかったら病院に行った方が良いな。
何やら寝室の外では香澄がバタバタしてる音が聞こえたが、熱でぼんやりとした意識の俺は何してるのか分からなかった。
やがて、制服の上に黒いペチコートを着た香澄が襖を開ける。
「じゃあ、千夜くん。行ってくるわね」
「ああ…」
今の俺は、そう返事をするのが精一杯だった。
最初のコメントを投稿しよう!