3人が本棚に入れています
本棚に追加
*プロローグ。クリスマスなのに*
木枯らし舞う風が黒髪を揺らす。
街はクリスマス色に染まっている。
サンタが通り過ぎる。
由羅カオルは息を吐いた。
すぐ白く凍って消える。
ホワイトクリスマスとはよく言うけれど。
明け方から昼まで振った雪はもうやんでしまった。
なのにまだ解けかけの雪が道路の隅で横たわっている。
(日向くん・・・)
ショウウインドウから中を見る。
お気に入りの手芸店。
「プレゼント編んでくれるの?だったら一緒に選ぼうよ」
太陽みたいに日向くんが笑う。
日向くんは太陽みたい。
私はヒマワリ。
いつもあなたを追いかける。
1人でどんどん先に行ってしまう。
でも途中で気づいて、振り返りいつも待っててくれる。
そんな日向くんが私は大好きなの。
「来ないなー」
お店で待ってても来るわけがない。
そもそも待ち合わせしていないのだ。
「クリスマスになっちゃった」
約束の買い物デート。
待ってる私。
せめてマフラーくらい編んであげたかったのに。
でも日向くんが私を困らせるわけがない。
いつも誰かに捕まって一緒に帰れない。
面倒ごとに捕まっているのだ。
日向くんはお人好し。
自分から首を突っ込んでいく時もある。
困った人を見ていられないのだ。
「用事じゃ、仕方ないよね」
風が冷たい。
**
最初のコメントを投稿しよう!