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2人とも、コートの下は普段着ではない。
姉の羊型のお客様は、薄いパープルのドレス。山羊型の妹さんは桃色の、サラサラとした生地のドレスを着て、お揃いのパールのネックレスで着飾っている。
「もしかして、これから結婚式にご参加ですか?」
「え?あ……この格好……場違いですよね」
「いえいえ場違いだなんて。そんな事はないですよ。とても華やかで、お客様によくお似合いです」
お世辞でもなんでもなく、思ったままに伝えたつもりだったけれど……。
「すいません」
羊のお客様は顔を赤くしてふわふわの髪と胸元のネックレスを隠すように押さえた。
「お姉ちゃん、また変なところですぐ謝るの悪い癖よ。せっかくお店のお兄さんが“似合ってる”って褒めてくれてるのに。ね、お兄さん、お姉ちゃんのヘアセット、私がやってあげたの。超可愛いでしょ?」
妹さんが、お姉さんの方へ体を寄せて腕を組んだ。
「とっても素敵です。まるで女神が入店されたのかと思いましたよ!」
秋田君はちょっと表現が盛りすぎじゃないかと思ったけれど、妹さんは満足気に頷いた。
「でしょー?お兄さん見る目あるわー。実は私達午後から従姉妹の結婚式に出るの。この辺土地勘が無いからかなり早めに家を出てきたんだけど、降りる駅間違えちゃって一駅歩いて戻ってきたところ。慣れないハイヒールで歩き疲れて休みたいなぁって思ったら、このお店を見つけたってわけ」
式場の場所を聞いたところ、ここから歩いて7〜8分の所にあるガーデンレストランだった。
「では温かい珈琲を飲みながら、時間までゆっくりしていってください」
「ありがとうございます。どうしよう……何を飲もうかなぁ……ユキちゃんは何にする?」
「えーっと……何これ、やば。珈琲だけでこんなに種類があるの?ワインリストみたい!」
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