変わった淹れ方と普通の淹れ方

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変わった淹れ方と普通の淹れ方

 ミルのメモリを“極細挽き”にセットして珈琲豆を投入。ガガガと豆が挽かれると、珈琲のフレグランスがふわっと店内に広がる。 「……良い香り」  大人しそうな羊のお客様がポツリと呟いたのが耳に届いた。 「珈琲豆を挽いた時の香り、良いですよね。私も一番好きなんです。この香りを閉じ込めて香水にしたいくらいです」 「それならマスター、僕、良い事を思いつきました!鼻の穴に珈琲豆を詰め込んでおけば良いんですよ。ねっ?お客様もそう思いません?」  秋田君が鼻を膨らませて、大真面目な顔をして見せる。 「鼻の穴に珈琲豆……ふっ……ふふふっ」  店に入ってきた時から肩をギュッと内側に寄せて緊張しているように見えた羊のお客様の表情が初めて緩んだ。 「あっ、お客様もしかして、今僕の鼻の穴に珈琲豆を詰め込んだ姿を想像しました?」 「えっ、あの……そ、想像しちゃってごめんなさい」 「あはっ私も想像しちゃった。ウケるー」  初対面の人を和ませる対人スキルに関しては、秋田君には敵わない。  お話は秋田君に任せて、僕の方は今回の抽出に使用する小鍋に、水と細かく挽いた珈琲豆を入れた。  その動作を見ていた山羊の妹さんが身を乗り出した。 「その小さい鍋、キラキラしてて超可愛い!もしかして、その鍋で珈琲を淹れるんですか?」 「はい。お任せで、“変わった”飲み方と“普通”のとの事でしたので、今回はお二人のご要望に沿う形で“イブリック”という方法でご用意いたします。お砂糖はいかがいたしましょう?お砂糖は先に入れるタイプですが、甘いのはお好きですか?」   「私、甘いの大好き!お姉ちゃんも好きだよね」 「あ、はい。甘いのは大好きです。……でも、私もそのイブリック?ですか?」
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