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自分の悲鳴で、俺は目を覚ました。
酷い夢を見ていたらしい。荒い呼吸を落ち着けながら、俺はいつもの習慣で、ゆるりと首を巡らせて周囲を探った。
薄暗いのは、瓦礫で周囲を塞がれているからだ。傍らで、肩から上の右半分を喪った見知らぬ死体が、虚ろな左眼で俺を見ている。
瓦礫の向こうで聞こえる、際限なく続く銃声と断末魔。辺りを漂う、硝煙と有機物の焦げる臭い──そう、ここは最前線だ。
俺は手榴弾の爆発に巻き込まれて、気を失っていたらしい。
自分の状態を確認する。右腕が上がらない。左足に感覚はなく、とにかく左の脇腹が痛い。
かなり負傷している。有り体に言って最悪だ。
でも、まだ動ける。
激痛を意識の外に無理矢理追い出して、俺はその場で上体を起こした。顔の左半分を伝い落ちる体液を、適当に手で拭う。
動けるなら、俺のやることは一つ──敵を殲滅せよ。
終わりの見えない現実に目眩がして、俺は首から下げたペンダントを握り込む。それは、相棒が死んで以来の癖だった。
その感触が、いつもと違う。
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