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驚いて手の中を見れば、俺の体液でドス黒く染まった箱が、上下に開いていた。
普通にしてればまず開かない。相棒は──あいつは、そう言っていたのに。
「……お前は、本当に莫迦な人間だよ」
箱の中身が何なのかを理解した途端、ここには居ない相棒への悪態が、口からこぼれる。
あの時、相棒がこれを持ってさえいれば──いや、相棒はこれを持って、最初から前線から離れていたって良かったんだ。
そうすれば、その身体に傷一つつけることなく、あいつは今も生きていたに違いない。
それなのに、これは俺に渡され、今も俺の手の中にある。
──私は、キミの相棒だ。
それは、最初に会った時の相棒の言葉。
──生きろ。これからは、お前自身の意思で『生きる』んだ。
それは、相棒の最期の指令。
俺は、箱に収まった小さな指輪型のボタンスイッチを、躊躇いなく押した。
これは、俺自身の選択。
口の端が上がる。
きっとこの結末は、相棒への良い手土産になるだろう。
「地獄で待ってろよ、絶対文句言ってやる」
次の瞬間、俺の体内から膨大なエネルギーが迸り──
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