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未来へ
「かた、こと」
誰かが、呼んでいる。
ここは、どこだ。
僕は、ベットの上で、途方に暮れた。
誰もいない。家族が。
一体何が、起きているのか❓わからない
僕は起き上がると、窓を開けた。その時だった。後ろに吹っ飛ばされたのだ。
膝があり得ない方向に曲がっていた。
「ギャー」
自分の意思とは無関係に、声が出た。
まるで、生まれたての赤ちゃんの様に。
とにかく、膝を元に戻さなければならない。右手を添える。
「ギャー」
触れただけで、声が出た。
それでも、なんとか本に戻した。
ベッドに上がらなければ、ならない。
両手をつき、10分かけて、よじ登った。
そして横になり、痛みに耐えた。汗が尋常じゃないくらいに、流れていた。
姿勢を変えることも、出来ない。
トイレに行くことさえ。それでも、トイレに行く為に、ベッドを降りた。ここは、2階だ。階段を降りる必要がある。
I時間かけて階段を降りた。また、I時間かけて、ベッドに戻った。どれくらい時間が経ったのだろう。救急車を呼んだ。
「大丈夫ですか?」
「いや」
「大丈夫ですか?」
大丈夫な、訳がない。
救急隊の言葉に、返答していくと、目の前の景色が壊れ始めた。やがて、魂が肉体から離れ、意識を失った。
「大丈夫ですか?」
気がつくと、病院だった。医師がいた。
「大丈夫ですか?」
答える事は、出来ない。
「大丈夫ですか?」
全く医者というのは、バカなのか?
大丈夫なら、ここにいない。
やがて、意識がハッキリ戻った。
「膝が痛いです」
すぐにMRI検査をした。
だが、膝には何もない。どうやら、医師も見た事がない、病状の様だ。
「治療方法がありません」
「どうしたら、よいのですか?」
「自宅で、シーネをつけて安静にするしかないです」
「そうですか」
結局、その日のうちに自宅に戻った。
1番困ったのは、食事だ。
冷蔵庫まで、たどりつくだけで、大変だった。ある物をそのまま食べた。
そして、ベッドに横になる。膝が少しでも、動くと激痛が走った。眠ることは出来なかった。ただわかっていたのは、このまま何もしなければ、一生、歩くことは出来ないという事だ。
2週間そんな生活をし、リハビリを開始した。散歩に出たのだ。初めは5メートルしか歩けなかった。泣きながら。次の日は、10メートル。そして20メートル。
リハビリする前に、風呂に入った。膝をマッサージする為だ。でも風呂に入るのは命懸けだった。足を上げて入るのが、大変だからだ。
やがて、100m歩ける様になった。近くのコンビニまでいける様になったのだ。
僕は、コンビニでタバコと、亡き父のお酒を買った。それを毎日繰り返した。
「ピー、ピー」鳥の声がする。
「カア、カア、」カラスの声がする。
当たり前だが、それが嬉しかった。毎日泣きながら、リハビリする僕には、何よりの薬だったのだ。
1ヶ月が経ち、500m歩ける様になった。近くのイオンまで、行ける様になった。イオンで、食材を買った。もっとも、涙を浮かべ買い物する、僕を皆気味悪く見ていたが。
僕は、歩く、こんな膝でも、未来のために。
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