きゅうりに水をやる

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 いつも通り「きょうのきゅうり」を写真に撮って夫に送る。きゅうりは育ち、きゅうりの花も数が増えて、今やグリーンカーテンならぬ、フラワーカーテンだ。きゅうりも自由きままに育っている。曲がったきゅうりは、曲がったうえにねじれまで起こして、これが人生だったら波乱万丈というのだろうな、とぼんやり思った。  せっかく久々に帰宅するのだから、今日は夫の好きなかつおのたたきでも買ってくるか。唐揚げまで作ったら、作りすぎかな。ビールもいつもは発泡酒だけど、今日だけは本物のビールを買ってあげよう。無給の私にはそれくらいしかできないけれど、喜んでもらえるといいな……。  と支度をしていたら、ガチャガチャ、ガチャッとドアが開いた。夫が帰ってきた音だ。 「おかえり。お疲れ様」 「ただいま〜」  夫はリュックも下ろさず、そのままリビングに入ってきた。そして「はいこれ」と言って、テーブルに手荷物を置いた。 「おみやげ」 「あ、ありがと……」  と言いかけて、私は目を疑った。  小さな半透明のレジ袋から、なんと、赤い花が顔をのぞかせていたからである。 「……え、待って。何これ」
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