きゅうりに水をやる

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「信じられない。私がきゅうりの世話を、好きでやってたとでも思ってたの。うそ。まじ? まじで? ありえないんだけど。今週、どんだけ大変だったか。毎日朝晩水やりして、ベランダ掃除してさ、葉の状態確認して、あなたに報告の写真も撮ってさ。それが楽しかったらそりゃ天国よ、天国でしょうよ。でも私はどんだけ辛かったか……つわりはなくなってきたけど常に胸がムカムカしてるし、体だって重たいし、動かなくていいなら動きたくない日だってあるのよ。たかがきゅうりの水やり、二、三分の話だと思ってるかもしれないけれど、それが絶対にやらないといけない不可避なタスクだった場合、二、三分でもものすごい負荷なのよ。しかも生き物でしょ? 私が怠けたら、すぐに死んじゃうんだよ? そう思ったら、休みたくても休めないじゃない。特に今週は私しかこの家にいなかったんだから。きゅうりが生きるか死ぬか、私一人の手にかかってたんだから。それを何? 好きそう? 好きそうだって? こんなの、趣味じゃないから。私の趣味では絶対にないからね? ていうかそもそも、あなたが持ち込んだ種じゃなかったっけ? グリーカーテンってそもそも、あなたが言い出したことだよね? しかもハイビスカスって……また仕事増えてんですけど。何これ。これが私へのプレゼント? ねえ、これってどういうことなの? 私にもっと働けって、そう言いたいの? なら言わせてもらう。ふざけんな!」
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