きゅうりに水をやる

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 止まらない悪口をつばと一緒に飲み込んで、プランターに水をやる。プランターも長方形二つ分なので、500ミリのペットボトルじゃ三往復くらいしなくてはいけない。  1リットルのペットボトル、買ってこようかな……。  汗をぬぐいながら、脳内で作戦会議。どう要らぬ仕事を効率的に短時間に済ませるか。しっかり考えておかなければならない。  そう、要らぬ仕事……。要らない、この仕事、まじで要らないの。いらねーんだよ!  怒り心頭に発して、空のペットボトルを急にベランダに投げつけようとした。しかしふと地面を見ると、端の方にうっすらと土がたまっている。  ああ……昨日風強かったから、プランターの土がこぼれちゃったんだ……。  掃除、掃除……。  もはや無表情で、私はペットボトルをそっとプランターのそばに立てかけた。  そんな私の鬱屈した感情とは裏腹に、きゅうりの芽はすくすくと伸び、窓辺に用意したネットにくるくるとからまっていった。ネットはベランダの天井まで来る高さで、うまくいけば完全に窓を覆うグリーンカーテンが出来上がる。このまま枯れずにいてくれれば、本当にグリーンな夏が実現できるかもしれなかった。
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