きゅうりに水をやる

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 さらに、ある朝ベランダに出てみると、きゅうりの葉の間に、輝くものを見つけた。 「こ、これは……!」  花だ。花が咲いている。  のぼる朝日のように黄色く輝く、これは、確かに、きゅうりの花だ。私は週末でまだ眠りこけていた夫を叩き起こした。 「ねぇ! ねぇ起きて」 「ん、何……」 「きゅうりに! 花が! 咲いてる!」 「ん、んっ?」  夫、寝坊した月曜の朝のテンションで飛び起きる。私たちは連れ立って、いそいそとベランダに出た。 「おお……」 「ね。二つも咲いてるよ」 「まじか……え、じゃあこの、ここのこれが、きゅうりってことかぁ……」 「そうなのよ……」 「へえぇ……」  私たちはしみじみと、らんらんと咲くきゅうりの花を眺めた。そしてスマホで写真を撮ったりした。いろんな角度で撮ってみたけど、夫の方が背が高いので、青空ときゅうりの花が美しく映えていた。  気をよくしたのか夫は、メッセージアプリの自分のアイコンまできゅうりの花に変えてしまった。「今から帰ります」的なメッセージを受け取った時、私はアイコンの丸い枠いっぱいに咲くきゅうりの花に気がついた。  おっと、まるで夫の手柄みたいになってんな……。
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