きゅうりに水をやる

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 ちらりとそう思ったけれど、きゅうりの花に免じて今回は不問に処すことにした。    そうこうする間にもみるみるうちにつるが伸び、葉を増やし、花も咲かせながら、きゅうりはすくすく育っていった。ホームセンターで買った園芸用のネットは、徐々に想定通りのグリーンカーテンに変貌しつつある。  今朝も、夫は様々な角度からそのグリーンカーテンを撮影している。何が楽しいのかきゅうりの花が咲いた朝から、毎朝、せっせと写真を撮りため始めた。しかもそのついでに、なんと、夫は毎朝きゅうりの花に水をやるようになったのだ。  夫を見送ってからベランダに出ると、ベランダが濡れている。あれっと思ってプランターをのぞくと、プランターの土も湿っていた。 「水やりしてくれたの」  夕食の時に聞いてみた。 「ああ、うん」 「ありがとう。実は、正直めんどくさくて」  すると夫は 「いや、いいよ、それくらい。おれも手伝わないとな」  と、空いた皿にぺっと枝豆の皮を捨てた。 「あ、でもさ。知ってた? あんまり葉を濡らしちゃいけないんだって」 「え?」 「おれも知らなかったんだけどさ。こないだテレビでやってたから。お前も、これから気をつけて」
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