きゅうりに水をやる

　無理なのよ。ねぇねぇ、無理なの。私せっかちなのよ。ねぇこれ何の拷問？
　もう常に屋外は暑いっていうのに、汗をかきかき、何で水やりにこんな時間をかけなきゃいけないんだろうか。何回も水くんで。水やって。葉に水がかからないようにそっと葉に手を添えて。
　これが一日二回、朝晩。
　夫が、帰ってくるまで、一日二回、朝晩……。
　しかも夜になると、夫から問い合わせの電話がかかって来る。
「きゅうりどうなった？」
　と聞くので、だから、またベランダに出てきゅうりの写真を撮って送る。
「おお。もうすぐ食べごろだね」
「めっちゃ曲がっちゃってるけどね」
「これくらいご愛嬌だよ。少しひとくせあるくらいが、ちょうどいいんだ」
「ふーーーーん」
「じゃ、明日もよろしく」
　ブツッ。ツー、ツー。
　えーと、ですね。
　私とお腹の子へのごあいさつは、お忘れではないです、かっっ？？
　いらっときて次の日は早朝から、きゅうりの写真を撮って送りつけてやった。
　するとすぐに返信が来た。早朝なのに、起きていたのか。

　きゅうりありがと。
　今仕事終わったとこで、いやされたよ。
　明日もよろしく。

　……えっ、まだ働いていたのか。