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あなたと出会えてわたしは熱々。
あなたの体温が伝わってくるようだわ。
今まで冷たいところにしかいなかったから、熱々のあなたと一緒になってうれしい。
ちょっと冷めてきたわね。
でも、あいかわらずあなたは暖かい。
ほかほかする。
時おりくっつき、また離れる。
いい関係性だと思うわ。
だんだんと時間が過ぎていったわね。
あなた、最初の熱々はどこへ行ったのかしら。
冷めてきているわよ。
え、あんたは最初から冷めてるって。
仕方がないじゃない、そういう性格なんだから。
でも、あなたと一緒になることを夢見ていたのよ。
また時間が経った。
あなたは既に平熱。
わたしと同じくらいじゃない。
わたしに文句なんか言わせないわ。
あなたはわたしと違って熱々が売りなんだもの。
あら、ついにはあなた、硬くなってきた。
これはまずいと思うわ。
わたしたち、一緒になれないかもしれないじゃない。
わたしが心配していると、フタががばっと開いた。
箸が、わたしとあなたを同時につかむ。
そのままお口にゴールイン。
あなたとわたしは口の中で溶けあう。
無上のしあわせ。
お弁当を開いた職人が言った。
「やっぱり、ごはんとしば漬けって夫婦みたいなものだよな。二つ揃うと弁当の味が増す」
完
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