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「そうか。落とし穴の話は知っていたが、実在しているとは……。あ、僕もこのマーナ魔法学校の卒業生でね。卒業後討伐部隊に所属していたのだけど、足をやってしまって戻ってきたんだ」と先生は右足を上げ、指さした。
「…痛むのですか?」とユーナ。
「いや、痛みは鎮痛魔道具を使っているから気にならないけど、動きが悪くてね。これを完治させようとすると膨大な魔力が必要らしいから……おっと、予鈴が鳴った。放課後、またこの場所に来て落とし穴の詳しい話を聞かせてくれるかな」
「わかりました、よろしくお願いします」と俺たちは教室へ向かって走り出した。
俺はジャンとリリーには先に二人で帰るように言っておいた。
放課後、俺たち二人は改めてネイマール先生に落とし穴の場所へ案内し、実際に体験してもらった。
「これは驚いた!」と、俺たちが待機する貯水槽裏手まで走ってきた先生。
落とし穴の入り口を塞ぐ魔法を調べてきたと言って、呪文を唱えた。
「もしかすると落とし穴はこれ1つじゃないかもしれない。もし見つけたら、また僕に報告してくれるかな。だけどね、危険だから他にも探そう、なんて気を起こすんじゃないよ。いいかい、どこに繋がっているか全くわからないからね」
先生は探すなと念を押しているが、どう聞いても次の落とし穴の報告を待っているとしか思えない。
俺たちも「わかりました」と笑顔で頷き、先生と別れた。
学校の敷地内とはいえ広大なため、ユーナを女子寮まで送ることにした。
ふたり、ゆっくり歩く。
「……全然わかっていないでしょ」とユーナが小声で僕に向かって話す。
「何の事かな?」ととぼけて見せる。
「落とし穴、探すつもりでしょ」ユーナは鋭い目つきをしながら笑みを漏らす。
「そういうユーナこそ、元々落とし穴を探していたんじゃないのか」
そうでなければ貯水槽の裏手なんかにひとりで行くわけがない。
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