背水の陣

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背水の陣

 空には色とりどりの鳥が舞い、地上には桜、紫陽花、芙蓉…様々な花が咲き誇る今日、このマーナ魔法学校の入学式だ。 「ソルト、新入生代表お疲れ」  そう言って廊下を歩く俺の肩を叩くのは、中等部からずっと一緒だったジャンだ。 「新入生って言ったって、俺ら中等部の校舎から高等部の校舎に移るだけだからな。新鮮さはないなぁ」  俺はクールを装いつつも、自分の真新しいブレザーの制服をチラっと見ては内心浮かれていた。 「どうだ?新しいクラスで友達は出来そうか?俺が居なくて寂しいだろ?」  ジャンとは残念ながら別のクラスになってしまった。 「半数は中等部からの持ち上がりだからな。まぁそれを言うならお前もだろ」  そんな事を言い合いながらも、ジャンは持ち前の明るさでそのうちクラスに親しい友人を沢山作るのだろう。  俺は……同じ学年の生徒が全て(ライバル)に見えてしまうので、心を許せるような友人が新しくできるとは思えない。  それでもジャンのように金髪碧眼のイケメンで背が高ければ向こうから寄ってきそうだが、俺は黒髪標準的な顔面、身長。中等部の頃はジャンの勉強をフォローしていたからか『ジャンの黒子』とまで言われていた。  ここ数年マーナ魔法学校高等部は人気が高く、寮がある為遠方からの受験生が増えてきている。  元々高等部へ上がるためには中等部の生徒も試験を受ける必要があり、半数の生徒が脱落する。  その脱落者の内のまた半数は魔法能力や魔法のセンスが無いとの理由で自ら試験も受けず、中等部卒業と同時に普通の高校へ編入していく者だ。  中には魔法能力が無いながらも、学力でしがみつく者もいて……。 「これはこれは新入生代表のソルト君。キミのような生徒が首席とは、我が校も地に落ちたな」  魔法彩学担当のイルジュ先生。  イルジュ先生はインテリな灰髪碧眼のイケオジ顔だ。  髪色と深いシワのせいでかなり年配に見えるが、実は40歳だとか。
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