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お宝探し
ネイマール先生は先日の事故の懲戒処分として、年度末までの学校敷地内の清掃を命じられた。
そのタイミングで「落とし穴探しはネイマール先生の依頼という事にして欲しい」とお願いに行ったので、「では落とし穴を探しつつ、時々僕の清掃作業のお手伝いをしてください」と逆にお願いをされてしまった。
また勉強時間が減ってしまう…。
だからといってお宝探しを辞めてしまうと、ひとりででも探そうとするユーナが心配だし、お宝の行方が気になってしょうがなくなる。
何よりこんな面白そうなことと無関係になんてなりたくない。
ユーナの鼻が空間に漂う僅かな魔力を感知する。
魔力を発する場所が近くなると、俺たちはお互いの手を握って捜索する。
万が一どちらかが落とし穴に落ちた時、お互いを見失ってしまわないようにするためだ。
魔力を特に感じる場所に落とし穴が無ければ、そこにお宝が眠っている可能性があると推測した。
最初は手を握ることにお互い抵抗を感じていたが、1週間も過ぎれば少し慣れた。
いや、毎回ちょっとドキドキしてはいる。
「で、昨日の話の続きを聞かせて。魔物が増えるとどうしてソルトのパパの会社が困るの?」と、ユーナが話をねだる。
教室にいる時のユーナは俺が話しかけても素っ気ない態度だが、お宝探しをしている時のユーナは聞きたがり・知りたがりだ。
無理もない。ユーナいわく、父親の稼業が『トレジャーハンター』であるがために、幼いころから定住することがなかったので学校もろくに行けず、特に社会情勢には疎いのだと。
単にお宝探しをするには耳が暇だから俺に話をさせる、語り部要員かと思ったが、意外にもしっかり話を聞いてくれていた。
俺ばかり話しているのでユーナの話も聞きたいが、聞きたがりの今は無理そうだ。それはまたいつか話してもらおう。
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