お宝探し

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「すみません。ネイマール先生の依頼で清掃作業の手伝いをしていたのですが、何故か北校舎の裏手からこの場所に転送されました」と堂々と答えるユーナ。落とし穴の事もお宝のことも伏せておくつもりらしい。  イルジュ先生はそれを聞いて俺を人睨みし、ため息を一つついた。 「あぁ、あのネイマールか。……ちっ。兄が兄なら弟も弟だな」  兄? 「ネイマール先生のお兄さんをご存じなのですか?」とユーナ。  イルジュ先生は頭をガシガシかきながら、ため息交じりに言う。 「お前らも噂で聞いたことがあるだろう。落とし穴を作って退学になった学生の事を。そいつだ。ネイマールの兄がその張本人だ」  はぁぁっ?? 「確か…アークとかいったか。……10年くらい前だ。あいつは魔力が高く優秀な生徒ではあったが、天真爛漫過ぎていたのだ。池の水を全部校庭へ移動させて『オープン水族館』などとふざけたり、実験用の魔物のレベル上げに挑戦したり、学校内の至る所に落とし穴を作ったり……あの馬鹿垂れが。学校長が偶然落ちた落とし穴の転送先が女子寮の風呂場だったことがきっかけで退学になったのだ。運よくその時間帯は授業中で、誰も風呂を使用していなかったのだが…」  その時何か苦労があったのだろうか。イルジュ先生が恨みのこもった表情になっている。 「落とし穴の転送先は、指定できていたのでしょうか」とユーナ。  今まで落ちた先は林や裏庭など、滅多に人が寄り付かない場所ばかりだった。 「あぁ、確かアイツは『女子風呂だったのは偶然だ。落とし穴を作る際、その場から20m以内で一番魔力が高いところに落ちるように設定しただけだ』と言っていたかな」  その話に俺もユーナも思わず「えっ」と反応してしまった。  高い魔力を探していた、という事か!?
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