お宝探し

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 長い話をするつもりなのか、イルジュ先生は俺たちに七色のジュースを与えてくれた。 「飲むと良い。一時的だが私の話が映像化して見えるはずだ」  グラスに入ったそのジュースは美しすぎて逆に怪しかったが、躊躇いもなく飲むユーナを見て俺も一気に飲んだ。 「この学校は曽祖父が築いたものでな。魔力は僅かにしかもたない身ながら、魔法使いに憧れていたらしい。指導出来る魔法使いや魔力を持つ生徒を集めつつ、自分も魔法使いの一員になれるように魔法彩学の研究に没頭した。研究材料はいくらでも使い放題だからな。当時はかなり無茶な事をしたらしい」  イルジュ先生にどことなく似ているおじさんが事業で巨万の富を得て、荒野にこの学校を建設した映像が自分の周りに映し出された。  ユーナも同じ映像を見ているらしい。魔法使いの指導員や生徒に過酷な研究を施すシーンに眉をひそめた。 「彼の息子…私の祖父も魔法彩学の研究を引き継いだが、学校長に就任した時点で生徒を使っての研究を禁止にした。指導員にも研究肌の奴がいるからな。そして父の代で…落とし穴事件が起こり、学校内での生徒による魔法の使用を禁止したのだ」  イルジュ先生はネイマール先生の兄の担任だったのか。  今の学校長からひどく叱られている若い頃のイルジュ先生が見える。  その横に……頭を下げる学生がいる。  ジュースの効果が切れたのか、その学生の顔をよく確認できなかった。 「ネイマールの様子をみよう。今日のことは秘密にして、落とし穴の事だけは今まで通りヤツに報告して消させろ。多分消すことはヤツにしかできん。永久魔法は簡単に解けないようにクセが付いているからな。もし本当に何かを見つけた場合…いや、それも含めて危険な状況になった場合はこれを使え」と俺に紫の液体が入ったチャームを渡す。 「それを壊せば、私はどこにでも駆けつける。魔法能力を持たない私では不安かも知れないが、これでもお前以上に努力してきたのだ。血反吐を吐くぐらいな」  イルジュ先生は過去の自分と俺を重ねていたのか。  嫌味は叱咤激励。もっと気合いを入れろ、危機感を持て、と。  ……いや、わかるかよ。  帰り際、イルジュ先生が俺に聞く。 「もし、見つけた魔力をお前の力に出来たとしたら、お前はそれで満足か?」  自分でも深く考えないようにしていた指摘に、俺は何も答えられなかった。
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