背水の陣

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「……これから3年間あの先生に教えを乞うのか。気が重いな」  中等部の時、時々特別講師として招かれたイルジュ先生にお会いすることがあった。  既に先生方に俺は『魔法能力が低い首席』として有名で、その頃からイルジュ先生に「お前に魔法使いは無理だ」「高等部へ行けば苦労するぞ」と散々言われていた。 「ソルト、大丈夫だ。ソルトは魔法とは関係のない家庭に育ったのだから仕方ない。きっとソルトは自分の魔法能力を上手に引き出せていないだけだ」  ジャンが僕の背中をポンポンと叩く。  それと同時に背後から「ソルトー、ジャーン。帰るよー」と俺の幼馴染のリリーがふわふわの栗毛を揺らしながらかけてきた。 「リリーはソルトと同じクラスなんだろう?いいなぁ。授業中、俺のわからないところを誰がフォローしてくれるって言うんだよ」ジャンが頭を抱える。 「入学式で校長先生が『高等部からは予習が特に大事だ』って言っていただろ。予習をしっかりしておけば大丈夫だよ」 「その予習は……!」  ジャンとリリーが俺に羨望の眼差しを向ける。 「どうせ中等部の時と同じく、毎日夕飯を食べ終えたら俺の家に来るんだろ。その時にすればいい」  リリーは俺の家の近所、ジャンは自転車で10分ほどの距離に住んでいるので、しょっちゅう俺の部屋へ入り浸っている。  まぁ最初は俺の両親の帰宅が遅いからひとりじゃ寂しいだろうっていう理由で、ジャンが宿題やゲームを持ち込んで来ていたのがいつの間にかリリーも参加し、それが習慣となっていた。 「編入生には負けていられないからな。最初から気合入れていくぞ」  マーナ魔法学校を卒業して、就きたい仕事がある。  魔法科学研究所の研究員だ。  俺はどう考えても実戦向きではないので、それをサポートする研究員になりたい。  世の中の魔物と戦う魔法使いの為に、色々な魔道具を開発したりするのだ。  俺的にはぶっちゃけ、世の中の為というより新製品の開発がしたい。  研究員になるためには、なんとしてもマーナ魔法学校を無事に卒業する必要がある。  しかし、金銭的な理由で卒業できませんでした、ではお話にもならない。  死に物狂いで勉強して、魔法も使いこなせるよう猛練習して、なんとしても首位、悪くて3位には……いや、やはり首位をキープしていたい。
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