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今宵も沢山の愛を注いで
「亜夢、神楽、ただいま~」
「お帰りなさい、百瀬くん」
「パパ、おかえり!」
平日の夜、百瀬くんは仕事から帰宅するや否や、満面の笑みを浮かべながらキッチンで夕食の支度をしていた私の元へやって来ると、頬に軽くキスをする。
「あー! ズルい! オレもママにチューする!」
それを見ていた神楽はまるで百瀬くんに対抗するように私にキスをすると言い出したので、「はいはい、ほら、これでいいだろ?」と神楽の身体を抱き上げた百瀬くんは、神楽が私の頬にキスをしやすいような体勢に持っていくと、チュッと軽く口付けて満足そうな表情を浮かべていた。
百瀬くんと神楽は、毎日競うように私に何かをしたくて仕方ないらしい。
「神楽、お風呂入るから準備して来な」
「わかった!」
身体を下ろされ、お風呂の準備をしてくるように言われた神楽は嬉しそうに自室へ向かって行った。
「まったく、神楽はいつも俺に対抗してくるよなぁ。迂闊にスキンシップも取れない……」
「……ッん、」
神楽が居なくなったのをいい事に、百瀬くんは後ろから抱き着いて来ると首筋にチュッと口付けてくる。
「……もう、百瀬くんってば。神楽の前では駄目だよ?」
「分かってるよ。いくら息子とは言え、亜夢の唇と頬以外にキスするのは面白く無いしね。それじゃ、風呂行ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
渋々私から離れた彼は荷物を置くとそのままリビングを出て行ったので、軽く手を振りながら見送ると、止めていた夕食の準備を再開した。
早いもので、神楽も五歳になった。
生まれた頃は、初めての育児に日々余裕を失い、毎日が戸惑いの連続だった。
だけど、百瀬くんの血を継いでいるだけあってとにかく賢い神楽は、他の子よりも手が掛からず、成長するにつれて育児が楽になった。
それに関しては良かったのだけど、いつの頃からか百瀬くんに対抗意識を燃やし始め、百瀬くんが私にくっついてくれば神楽もくっつきたがるし、キスをしようものなら自分もと言ってキスをせがむ。
可愛いし、息子に好かれるのは嬉しいけれど、所構わず『ママ大好き』オーラを出されると、少しだけ戸惑ってしまう事もある。
それに、あんまり神楽ばかりを構うと百瀬くんが拗ねてしまって、機嫌を取るのが大変だったりもする。
勿論、仲が悪いとか、お互いが嫌いなんて事は無い。
神楽はパパの事も大好きだし、百瀬くんも神楽の事を愛しているのが伝わってくるから。
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