2. 憧れの異変

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2. 憧れの異変

 北の砦まであと一日、というところである変化が起きた。ユピテル団長が体調を崩したのだ。  といっても、いつもより怠そうな様子に気づいたのは僕だけで、団長からも誰にも言うなと厳命されてしまった。 「薬が……」 「、え? 風邪薬でしたら僕のを飲んでください!」 「いや、俺も持っているから大丈夫だ。今日はここで野営するから皆に伝えてきてくれ。食事も俺は不要だから、もう休ませてもらう。……悪いな、頼んだぞ」 「はい!」  いつも頼りがいのあるユピテル団長に頼られて、僕は褒められた犬のように喜びを隠しきれなかった。その表情に気づいた団長がフッと笑う。……いつも以上に色気マシマシじゃないですか〜!?  僕は浮かびかけた煩悩をかき消すため、慌てて団員の元へ走った。  それにしても団長の身体が心配だ。暦の上では冬に入り、北へ近づくほどに気温も下がった。これから雪が降ると野盗の動きも鈍るだろう。この辺は豪雪地帯で、真冬は外に出れば命の危険があるほどらしい。  騎士は鍛えているぶん身体が丈夫とはいえ、風邪を引くこともある。他の団員だったら気にも掛けないが、ことユピテル団長に関しては話が別だった。  幸いにも明日砦に到着すれば、数日間の休暇が与えられる。番様がヒート真っ只中でなければ少しは休めるだろう。    緑騎士団員は野営もお手の物だ。基本的に「自分のことは自分でやる」がモットーで、交代で作る食事以外は天幕の準備も片付けも個人で行う。危険な場所でなければ、ある程度散らばってプライバシーを守りながら野営することも可能だ。 「メルキュール副団長、この地方の噂知ってますか? 初雪の降った日に恋人と結ばれると、ずっと一緒にいられるらしいです」 「いや、初めて聞いたな。僕は南の出身だから……」  食事中、なんともロマンチックな話を聞いた。今回の随行員は気のいいやつばかりで、赴任したての僕にいろいろなことを教えてくれる。あそこの娼館がいいとかも含めてだが……もうすぐ旅の終わりとあって、団員たちも興奮を隠せないのだ。
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