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1. 憧れとの再会
ずっと憧れだった人に再会できると分かってから、僕はずっとドキドキしていた。
ユピテル団長は、平民でありながら緑騎士団を纏めあげる絶対的リーダーだ。国境警備に特化した緑騎士団にはとにかく強さが求められ、荒くれ者も多い。身分なんて関係なく、団員の統率力が一番重要だ。そんな中、満場一致で選ばれた団長、それが彼だった。
「メルキュール……メルクだな。今日からよろしく。期待してるぞ」
「はいぃ!」
差し出された手に自分の手をおそるおそる差し出すと、ガシッと強く握られた。胼胝が多く指先の固くなっている手は、肉厚で温かい。戦う男の手だ。
十年も憧れ続けた推しを目の前にして、僕は言葉が出ない。でも心の中は大暴れだった。
(やばい。ユピテル団長、めちゃくちゃ格好いい〜〜〜〜!!)
王国の騎士団には、白・青・緑の三種類あって、それぞれに団長と副団長がひとりずついる。街を守る青騎士団が最も大所帯なのだが、重要な位置を担っていたマウォルス副団長が三度目の育休を取ることになって、上層部はついに副団長の増員を決意したのだ。
騎士団には体格的なメリットからアルファの者も多い。番を大切にする彼らが、パートナーのヒートや出産で休暇をとることは当然で、騎士団でも認められている。しかし体制が追いついていなかった。
度重なる団員からの嘆願を経て、副団長を三人まで増やすことになったのが今年の秋。奇跡的にまだ18歳の僕が選ばれたのだった。
「副団長の増員にあたって、お前を緑に配置する。うっかりしている所が不安だが……メルキュール、お前は強い。ちゃんと団長の支えになれよ」
「は、は、はい!」
「心配だなぁ……まぁお前も一応貴族出身なんだから、団長に反抗的なやつらを締めてやれよ」
「そ、そんな不届き者がいるんですか!?」
あのユピテル団長に反抗的な態度を取る人がいるなんて、信じられない。聞けば緑騎士団にも貴族出身の者はいて、平民が団長を務めていることに不満を抱いているらしい。もちろん団長の統率力に偽りはないから、最近入ったやつらだけが文句を言っているらしいけど。
国の宝に対してそんな態度、断じて許すまじ……!
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