孤独

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「はい、鬼越係長。私は自分に命令無視の前科があるので、出雲さんに強い事が言えません。大切な人を失った気持ちはおっしゃる通り、痛い程わかるので。」 「…話を元に戻そう。君の口からもう一度、出雲に無謀な行動を控えるよう、説得して欲しい。捜査の妨げになるだけじゃない。相手が過激派活動家…命のゆりかごの残党だったら、出雲の手に負える連中じゃないかもしれないんだ。どんな危険が待ち構えているのかわからない。」  吉野は尚も鬼越を見つめていたが、やがて気良に向けた。 「出雲さんが本気で犯人を捕まえたいなら、いくら私が言っても無駄ですよ。万が一、出雲さんが手がかりを掴んだら、捜査本部に情報を提供するように言っときますね。私に出来る事はそれぐらいです。」  気良が気を取り直し、一転してこびるように言う。 「と、とにかく…相手は過激派の可能性もあるんです。警察官一同、足並みを揃えなければ敵わない相手ですから!ぜび、協力して欲しいんです!」  気良のその演説に、吉野の心が動かされた様子はなかった。 「…言いたい事は言いましたので…これで」 「はーい。次来る時は、何か甘い物でも持って来てくださいねー。もしかしたら、頷くかもですよー」  ひらひらと手を振りながら、二人を見送る吉野。二人が出て行った後、吉野は振っていた手のひらをベットに叩きつけた。  何が、何も、出来ない、だ。  間違いを選んで欲しくない、当たり前だ。  でも、以前に大切な人を失った経験があるからこそわかる。  もう、出雲は止まらない。  復讐を考えるから、孤独になるわけじゃない。  孤独になるから、復讐になるのだ。  だからこそ、復讐は簡単には止まらないのだ。
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