第1章 死に近い笑顔

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「ナイフを捨てろッ!!」  これまで何度も直面した、人の命が失われるかもしれない瞬間。  警視庁刑事1課の刑事として2年努めている、出雲健(いずもけん)はそれでも冷静ではいられなかった。吐気すらする。 「お前が捨てろッ!銃を!捨てろッ!」  追い詰められた犯人である男は、人質の女性の首筋にナイフの刃を押し当てて恫喝する。   「…」  緊張の生唾を飲み込む出雲。 「この女を殺すぞオラァ!!」  感情が高ぶり、最早聞き取りにくい男の言葉。それと同時に瞳孔の開き具合が、まともな人間のそれじゃない。  恐らく、本当に殺す気だ。 「聞こえねぇのかぁ!!」  男は怒鳴り声を上げながら、ナイフを出雲に向かって突き出した。  その瞬間だった。  ビルとビルの隙間から、闇に溶け込んでいたかのように、出雲の相棒…吉野静(よしのしずか)が姿を表した。
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