父親

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ーーーーー ーーーー ーーー ーーー待ってください!!ーーーさん!!       遠い昔、共に警察官としてあるべき事を誓った、愛した男性がいた。  その男性の姿は、手を伸ばしても触れられない。どんどん遠くなっていく。 ーーー出雲さん!!  そして、次の瞬間には、今度こそ、と誓った男性が前にいた。  この男性にも、手は届かない。 ーーー私はまだ…私はまだ戦えーーー  血を吐き散らしながら、相棒に意志を吼える。  ともに意志を誓い、ともに駆け、ともに最後まで戦いたかった。 「はぁ…はぁ…はぁ…」  車内で目を覚ます吉野。  長い、夢を見ていた。鉛のように重い身体を起こして、窓から空を見る。蒼く、あおく、どこまでも碧く、手の届かない、青い場所。  吉野は遠く、遠くに向かった、在る筈のない果てを見る。 「…あは、は…」  乾いた笑い声が出る。  遠い。誰も辿り着けなかった筈の自分が、今と成れば、誰よりも遠い。  肺の奥が、喉の奥が救いを求め、息苦しくなった身体から、生きる魂が抜けているような。 ーーーそれでも、それでも私は  涙で滲んだ目の奥には、まだ出雲の背中が見える。  遠く、遠く、皆置いて行ってしまった。  今、出雲の背中が、碧く、遠く。 「はい」  電話がかかって来た。もう、頼る相手はいない。  彼女から電話がかかって来なければ、自分は存在意義を果たせず、自殺でもしていたのではないだろうか。 「ありがとうございます…。貴女には、助けられっぱなしですね、星さん。」  礼を言い、電話を切る。  自分で言っていて、空しくなる。  共に、最後まで刑事として戦う事を誓ったのに。  またもや、出雲から引き離れてしまった。  佐遊と伊代留を逃してしまい、急ぎ戻ったが残っていたのは死体が二つだけ。出雲とコーイン、姫榊の姿はなかった。  鬼越も気良とも連絡が取れず、我を失いそうになる絶望が襲って来た。  そんな時に、星から連絡が来たのだ。  これが罠だろうと関係ない。たとえ、無惨に死のうとも、出雲の隣に立てるのならそれでいい。  そう、結局の所、どう終わろうと構わないのだ。  ただ 「私は…私は、あの人と共に戦いたいだけなんだ…」
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