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ーーあ、あなたに…に、人間の心は…ないの?
あの時、彼女に言われた事が脳裏を過る。
うたたねをしていたようで、最悪な目覚めだ。
ーーあなたは、身勝手過ぎる…
そう言えば、友と思っていた者にも言われた。
責める言葉に、ずっと黙れと返して来た。
ーー僕は…
どいつも、こいつもーー
何度も、何度も、絶望を味わって来た。
警察官になり、最愛の人に出会い、全てを失いただ一つの約束を抱えて、身を隠した。
平穏が来ると思っていたのに、絶望が続いた。
それでも、諦めなかった。
もう、自分だけの人生じゃない。こんな自分が、小さな生命を託されたのだ。
父親なのだ。
ーーどれだけ、お前らが来ようと
僕は、負けんーー
愛を失い、平穏を失い、絆を失った。
恐らく、夢も失うだろう。
それでも、男は…厳教伊織は、スパルタンは、戦場に立つ。
立ち止まらず、襲い来る怨嗟を叩き伏せながら、戦場を駆ける。
「たった一人で、勝てると思うのかい?」
「ああ…そうだ。僕は、方舟に勝てんかもしれん。僕は最後まで…」
武は、戈を止めると書いての一文字…それを胸にして来た。弟子にもそう教えた。それが、自分で捻じ曲げた。弟子を裏切った。
武は、戈にて止めると書いての一文字…武人失格だ。師失格だ。親…失格だ。
「僕は最後まで…半端者で」
人類の救いとやらではなく、一つの命を救う方を選んだ。真っ当な人間ではないと、言われた。
「最後まで、非人間だ…。だが、僕の…この意志は、砕けん。それがどんな戦場で、どんな地獄であろうとな。」
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