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不満そうな声を上げた吉野に出雲は煙たそうに顔をしかめた。
「…はぁーい」
逃げれない、と悟り渋々返事をする吉野。出雲の険しい眼差しが、みるみるうちに飼い犬に手を噛まれた少年のようになる。
吉野の眼の前にいる青年は、努力家であり真面目で…それが評価に繋がり、刑事課へ配属された。
知識が豊富で素早い判断力と行動力、吉野ほどではないが格闘技術もある。自分にストイックで、ルール違反を許さない、まさに警察の鏡。
ーーーようは、いい人なんですよねぇ
ため息が止まらない出雲を見ながら、吉野は思う。ただ、その真っすぐ過ぎる故に、身を滅ぼす危険性がある。
こういう人間は、目標を達成する為に突き進むのだ。自分の肉体や精神が傷もうと無視し、傷んでいる事にすら気づかない。
「もうちょっと加減出来るよぅ頑張りまーす」
そう言う吉野に、わかりやすく安堵する出雲を見ると、罪悪感と意地悪な感覚が芽生えた。
「てか、特務…執行?なんか言ってるじゃないですか?あれはなんすか?」
「自分にしか全う出来ない、特別な任務を執行する…ようはぶち倒しちゃうぞッて気合い入れです!」
「それ禁止で」
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