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吉野の様子がおかしい。今までも行き過ぎた執行行為はあったが、最近はそれに拍車がかかっている気がする。今夜の振る舞いもそうだ、悲鳴を上げる被疑者と被害者を前に笑みすら上げていた。
「なんかありました?」
出雲の率直な質問に、吉野の表情が微かに硬直する。
「別に」
「今回のジャーナリスト殺人事件は広域捜査になるんす。今後は課や管轄を超えての捜査になります。俺だけが見てるだけじゃなくなるんすよ?」
最近、政治家を中心にゴシップネタを集めていたジャーナリストが何者かにより殺害され、遺棄されていた所を発見された。
殺害される前、仲間内にとんでもないネタを見つけたと話していた事からそのネタ関係で巻き込まれたのではと見ている。
そして、被害者はジャーナリストとして優秀で、今までの活動から闇が深いものではという上層部の判断から全課総員で事件を解決する命が下った。
つまり、普段の吉野を知らない警察官が、人を半殺しにしている吉野を見たら、どちらが危険人物かわからない。出雲でも時々曖昧になる瞬間があるのだ、あり得ない話ではない。最悪な事態になる事すら、出雲は危惧していた。
出雲の忠告に吉野の口元がいびつに歪み、睨みつける。
「それはあれですか?俺だから見逃してるんだって…事ですか?」
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