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少しばかり自暴自棄になっている自分を吉野は自覚していた。普段ならばここまで出雲にたてつく事はない。
何故自分がこうまでして出雲に食い下がるのか。考えればすぐに陳皮な答えが浮かび、苦笑する。
今朝あった、電話のせいだ。
自分の願いを…唯一ある信念を砕く、現実。
八つ当たりなのだ、単純に。これが世に言う、自暴自棄なのだろう。
「出雲さんはいい人過ぎるんですよ…気に入らなければ私を撃ってください。それを貴方は許されてますから。」
何事もなかったかのように帰ろうと背中を向ける吉野。出雲の口からこぼれたのは
「すいません…」
謝罪の言葉だった。その言葉を聞くやいなや吉野は振り返った。目を丸く見開く、吉野だけじゃなく出雲までもが。
何故謝罪したのか、自分自身にもわからなかった。ただ、思わずこぼれ出た言葉を後押しするように感情が明確になる。
「俺は…吉野さんを撃ちたくねぇっす。相棒じゃないっすか…これまでやいやい言い合いながらやって来た相棒を撃つなんて…。俺はあんたが好きだから…無茶なんてしてほしくない…」
吉野の丸く見開いた目が、徐々にいつもの形になっていく。しかし、その瞳の感情は同意でも反発でもない、複雑なものだった。
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