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エピソード
学生の頃、ひたすら部活に勤しんでいたごく平凡な女――未来は、社会人になると特にやることもなく、家と会社を往復する毎日だった。
趣味もないし、これと言って得意なこともない。
おしゃれにも興味ないし、自分磨きとかいうものもよく分からず、ただひたすらに働いた。
故にお金を使うことがなく、未来の口座のお金はどんどんと桁数を増やしていった。
社会人5年目の冬。
未来はもうアラサーを迎えていた。
周囲は恋人だの結婚だのと騒ぐ頃合い。
そんなある日の夜、未来はいつものようにお風呂上りにSNSをチェックしていた。今年の冬は寒くて肌恋しいと嘆いている友人がいる。
……そういえば冬用のマフラーを去年汚してしまって、まだ買っていないや。
ふと気づき、未来は片っ端からマフラーをネットで探し始める。
「え、何この子…………」
好みのマフラー無いなあと思いながらスクロールを速めると、マフラーとは全く関係のない一人の男の子が出てきたのだ。
よく見ると、『マフラーが似合うランキング』という見出しがついている。
パケ買いのように、その一人のサムネイルの男の子に惹かれ未来はサイトを覗いてしまう。
「か…………かっこいい……」
するとそこには真っ白のマフラーをぐるぐる巻きにし、微笑んでいる男の子が現れた。
ランキング一位だそうだ。
未来は一瞬で心を奪われてしまう。
その写真のコンセプトは、『クリスマスデートで寒空の中恋人を待っている彼氏』だという。
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