エピソード

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 ついに母からお見合いの話が出た。  相手は32歳の若手社長だそうで、母の友人の兄の息子さんらしい。  断る理由もなかったので私は二つ返事でご飯会に参加した。 「未来さんは、趣味とかありますか?」 「……特にないです」 「じゃあ、ハマっているものとか? 僕は今スノボーにハマっていまして」  見た目はどこにでもいそうな普通のサラリーマン。  ちょっと良いブランドもののスーツと時計はしているけれど、それだけ。単発黒髪。メイクだってしていない。  話もつまらない。  未来は話そっちのけでひたすらご飯に手を付ける。  相手の名前も忘れた頃、鞄に入れていたスマホが鳴った。  ハクのSNS更新のお知らせだ。 「猫……ですか」 「はい?」  男の人は少し驚いたような表情をして言った。 「猫、お好きなんですか?」 「ああ、はい」  未来のスマホのロック画面をじっと見つめる。 「今度猫カフェにでも行きましょう」 「??」 「その猫に似ている子もいますよ」 「行きます!!!」  未来が右手を挙げて返事をすると、男の人は笑った。 「ぜひっ」  その笑顔がなんだか無邪気で、32歳とは思えなかった。
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