愛になるから

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 別に普通の学校が有る。その一つのクラスは基本的には問題を抱えてる訳ではない。不思議なのは夫婦と呼ばれる子たちが居た。  軽く仲の良いように見える二人。六年生で休み時間の間ずっと男女で話しているのはあまりない。理由は確かに有る。  どうってことは無い。簡単に言うと二人は幼馴染。それも幼稚園のまだ記憶が曖昧な頃からなので文句を言われる義理も無いくらい。 「熱いよな」  だけどそんな二人が今日も向かい合って勉強のわからないところを話しているとこんなことを言う男子がいる。おこちゃまだ。そしてこんな子に限って煩い。 「好きに言わしておけば良いよ」  女の子のほうがちょっと気になったのか顔を挙げると、男の子のほうがノートから視線も外さないで語る。  こんなのは日常茶飯事。今の男子だけじゃないくて、普通に女子たちにもそんな風に言われてしまう。それは二人が夫婦と呼ばれても気にしないから。  元々は二人の苗字が同じだったから誰かが「夫婦なんじゃね?」と冗談を言いだした。正直面白くはない。苗字なんて日本で一番多いものだったのでクラスに二人居てもおかしくない。この学校には普通にそんな苗字が居るのだから。 「もう直ぐ授業が始まるぞ」  先生が現れると今の言葉を聞いていたみたいで、さっきの男子を牽制する。 「だけど、あの夫婦はまだ話してるじゃん!」  文句は煩い男子の得意技。 「二人はチャイムが鳴ったらちゃんとするだろ。誰かとは違って」  先生の言葉にその男子はブスッとしたが、それ以上反論はできないみたいで自分の席のほうに向かう。この時は「怒られてやんの」と他の男子からの言葉があって、さっきの男子はまだじゃれ始める。  この二人が先生、そして他の生徒からも信頼や一目置かれてるのにも理由がある。それは優等生と言うこと。  片方は勉強が良くできる。とても優秀なのだ。そしてもう一方は学校のサッカー部でエースを張るほどの運動神経の良さ。当然二人は真面目。 「俺にも勉強教えてくれよー」 「今度の試合期待してるね」  もう授業が近くなったので復習を終わらした二人が離れると、それぞれに友達が話しかける。 「お前はそれほど成績悪くないだろ?」 「うん。応援してねー」  秀才くんは文句を言い、エースちゃんは笑い掛けてた。  話を聞くだけなら逆の予想をしてしまうことも多々ある。男の子で秀才は有ること。女の子でサッカー部なのは時代と言うものだろう。  放課後図書室で勉強をしていた秀才くんが教室に戻った。結構な時間を勉強に費やしていたのか、教室にはもう誰もいない。  すると、秀才くんは窓から校庭を眺める。そこにはいつもこの時間サッカー部が練習をしている姿が、今日は無かった。 「あれ? おかしいな」  キョロキョロとエースちゃんの姿を探す秀才くん。この時間まで残っていたのはエースちゃんを待ってたから。その背後に人が忍び寄る。  楽しそうな笑顔を称えたエースちゃんが「わっ!」と秀才くんの耳元で叫ぶ。  当然秀才くんは急なことに驚いてた。 「脅かさないでよ。今日は部活無いの?」 「先生が用事有るんだって。さっきの面白かった」  ケラケラとエースちゃんが笑ってる。だけどそれで秀才くんも怒ることは無い。どちらかと言うと笑顔につられてる。 「そっか。部活だと練習量が少なくならない? クラブチームのほうを考えたら?」 「うちはお金無いんだよねー。学校の部活くらいしか出来ないよ」  この街のサッカー人気は全国で一番。もちろんプロクラブのジュニアチームだってあるけど、学校の部活とは掛かるお金が違う。 「もったいないなー」 「クラブだったら君に勉強を教えてもらう時間なんてなくなるじゃん」  ちょっと残念そうな秀才くんの反対側ではエースちゃんが笑ってる。 「うん。勉強時間も必要だ」 「人を馬鹿みたいに言わないでー」 「馬鹿じゃん」  その通りでエースちゃんは秀才くんに勉強を教えてもらってなければかなりおバカちゃん。  だけどエースちゃんにだって反論できるところは有る。 「運動音痴なくせに!」  秀才くんはそれはもうスポーツが出来ない。ある意味で二人は補い合い、デコボココンビなのだ。
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