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当日試合になる。それは六年生の引退試合として記念に行われる。
相手はかなり強い。
それでもエースちゃんは凛としていた。
「いつも通りに戦えば勝てない相手じゃない!」
エースとしてだけじゃなく、キャプテンマークまで授けられた彼女は円陣で堂々とした言葉を放つ。
「頑張れよ!」
ピッチに広がる前に一度秀才くんを見る。すると応援の言葉が有ったのでニコッと笑ってから走った。
周りの昨日の宣言を聞いた者たちからは黄色い声援が二人だけに届く。
試合はエースちゃんの活躍で優位に進む。二つのゴールを決めとことん主力として戦う。試合終了も近付いてもう勝ちも近い。
「勝とうね!」
エースちゃんはチームを鼓舞して声を掛けていた。その姿には秀才くんでなくても惚れてしまいそう。まあ、秀才くんはもう惚れてしまって恋人なのだけど。
相手チームも必死。あちらだって六年生は引退。エースちゃんへのマークはとても厳しい。
それでも活躍しているエースちゃんがボールを持ったときスライディングタックルがあった。
「ファウルだ!」
直ぐに味方チームから声が上がる。もちろんそれは審判も納得の様で笛が鳴るけど、様子がおかしい。エースちゃんが立ち上がらない。
「ケガかな?」
応援をしている人達からもそんな言葉が広がる。もちろん二人のクラスメートはあの告白の主である秀才くんを見る。だけど、その時にもう秀才くんの姿は近くになかった。
既に秀才くんは走ってた。エースちゃんの元に向かって。
「どこが痛い?」
「踝を踏まれた。とっても痛い!」
じっと足を押さえてエースちゃんのいつもの明るさのない。秀才くんは直ぐにその足を診る。
関節を回すとそうでもないが踵を押さえると涙を流してこれでもかと痛がる。
「骨折はないと思うけど、ひびくらいはあるかもだから病院に」
「わかった誰か担架を用意してくれないか」
秀才くんは先生に言うと、先生は他の生徒たちに指示を与える。
「要りませんよ」
秀才くんはエースちゃんを担ぐ。エースちゃんもそれは了解しているみたいに背中にしがみついている。
クラスメートからは二人を励ます声がある。それはもうおちょくりの一つもない。ただ応援している。
「悔しいな」
「心配しなくてもこのくらい直ぐに治るよ」
「違うよ。君が格好良いから。今日は私の日だったのに」
呆れながらも秀才くんはエースちゃんのその言葉に照れていた。
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