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特々こい々ミルクキャンディ
私は白いものに縁があるみたいだ。
名前からして「雪柳かすみ」だもん。おばあちゃん譲りの白“すぎる“肌は、初対面の人に必ず驚かれる。
そして、一番大好きな食べ物は『特々こい々ミルクキャンディ』。ミルクの甘さと香りとコクがぎゅーっと詰まった、真っ白なキャンディなの。
もちろん、雪も好きだよ。綿雪が、高校の裏庭に生えている木々の帽子みたいになっているのを見て、自然と顔がほころぶ。
私は裏庭の池の前でしゃがんだ。池の周囲を囲む石を踏む音がした。
地面の雪と同化しているティッシュを拾う。これが美化委員会のお昼休みのお仕事……まあ、私以外は誰もやってないけど。
今日で二月が終わる。暖かくなってきたら、美化委員のお仕事はもっと増えるだろうな。
でも、これがいいんだ。こうして、誰もいないところにいる方が、安心する。
仲の良かった子と高校が別々になっちゃって……いわゆる「高校デビュー」に失敗しちゃったから。
むしろ、大人しい私に親友がいた、中学時代までが奇跡だったんだと思う。
私は白いシュシュを解いた。裏庭清掃の時は髪を縛っているけれど、この時期に首を出す格好は堪える。
シュシュを制服のブレザーの右ポケットに入れるのと同時に、ポケットの中の熱が私の右手を労ってくれる。その心地良さにほっと吐いた息は、やっぱり白かった。
*
役目を終えた私は、一年三組の教室に帰る。窓の下のストーブは今日も人気者だ。
廊下側の一番後ろが私の席だ。ストーブの取り巻きになることを許されない場所に座って、私はぷるっと震える。
「夜人、何だよそれ!」
黒板の方で男子が笑っている。彼が口にした名前に、私の肩がびくんと反応してしまう。
黒い髪に、シャープな目鼻立ちの夜人くんだけど、その顔はどこか困惑していた。
夜人くんの、骨格がはっきりした手にあるのは……白いシュシュ。
「お前、縛る髪なんかねえだろー」
「違う。知らない間に入ってたんだよ」
「そんなわけあるかよ! お前にもとうとう彼女ができたのかー! さすが雨羽子高校の隠れイケメン!」
居心地悪そうに顔をしかめた夜人くんは、ブレザーの右ポケットにシュシュを押し込んでから、空になった手を左ポケットに入れた。
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