1.初夜

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1.初夜

‘’バンッ‘’ 怒りに任せてスイートルームのドアを閉める雄介さんの様子に、私は一瞬凍り付いた。 「何だ!あのコメントは?!」 けれど、それでも気持ちを奮い立たせて、私は冷静を装って答えた。 「どのコメントですか?」 「ふざけんな!誰を想い続けて生きるって?!よくあんな事が言えたもんだ!」 私は小さく笑って自嘲気味に答えた。 「質問に答えただけです。結婚についてどう思っているか聞かれましたから。記者の方や世間の人々は、私たちふたり、苦楽を共にしていきますよって、固い絆があるんだって、思ってくれたでしょうね」 雄介さんは更に憤って、 「それがふざけているというんだ!!俺にはあいつと一緒になるまで、俺との生活を我慢するって聞こえた!!」 と怒鳴り散らした。 「そう思うなら思ってください」 雄介さんは怒りに満ちた、忌々しいものを見るような視線で私を睨みつけた後、今度はおぞましいほどいやらしい目つきで私を舐めまわすように見つめて来た。 「まあいい、来い。やっとふたりきりになれたんだ。今夜は覚悟しろよ?」 私はその意味を理解した瞬間、ぞっとした。 思わずじりじりと、雄介さんとの距離を置こうと後ずさる。 「・・・嫌です。結婚したからと言って、心まで一緒になったわけではありません。あなたに思うままされるなんてまっぴらです」 「生意気な女だ。黙れ。固い絆があるんだと、思われたいんだろう?」 そう言って雄介さんは、口角をニヤッと下品に引き上げて私に近づき、上品なソファに無理やり私を押し倒した。 「いやっ!」 私は抵抗したが、雄介さんの力に勝てるわけもなく、両腕をひねり上げられ、頭の上で押さえつけられた。 「っはは!もっと啼かせてやるよ、めちゃくちゃにしてやるからな!」 強引に唇を覆われ、舌をねじ込まれ、貪るように舐めまわされる。 更に私に跨って、力づくで私のふくらみを掴んで、乱暴に揉みしだいた。 「痛い!やめて!!」 けれど雄介さんは楽しそうに、 「ほら、もっと痛めつけてやる!」 と言って、ワンピースの胸元を引きちぎった。 「いやあ・・・っ」 こわい、犯される・・・! 恐怖で涙が溢れてくる。 「いいぞ泣け・・・もっと痛がれ・・・ははっ!気持ちいいだろう!?」 胸のふくらみの先端を噛み、ジュルジュルと吸われ、おぞましい悪寒が背筋を走る。 やめて・・・やめて・・・いや・・・やめて・・・! 葵とは程遠い、乱雑な振る舞いに、私の心は凍り付いた。 と同時に、感覚全てが一瞬にして無くなった。 強く胸を掴まれても、粗雑にあしらわれても、何も感じない。 されるがまま、反応することも、涙が出ることもなくなった。 「なんだよ、どうした?もっと泣き叫べよ!」 どんなに攻め立てても反応しない私に対して、雄介さんは飽きてしまったようだった。 「くそ、つまんねえな。・・・萎えた。もういい」 そう言って要らなくなった人形を捨てるように私をソファに置き去りにし、荒々しくドアを閉めながら、部屋を出ていった。 私は汚らわしい跡を消したくて、熱いシャワーを浴びた。 掴まれた腕が痛い・・・噛まれた胸が痛い・・・ けれど何より、心が痛い・・・ 私は穢れてしまった。 葵と肌を重ねたあの夜を思い出し、穢れた体を両腕で抱き締めた。 とめどなく溢れてくる涙が、もう止まらない。 ・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。 ああ・・・葵・・・本当にごめんなさい・・・。 あなたに大切に抱いて貰ったというのに、こんなに穢れた体になってしまった。 こんな私じゃ、もうあなたに見合わないかもしれないけれど・・・。 それでも・・・ それでも・・・あなたに、逢いたい・・・ ああ・・・葵・・・・・・・
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