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モヤモヤしながら家に帰って、唯の世話をしながら夕飯を作る。
最近起きている時間が長くなってきた唯は少しずつ手がかかるようになってきた。
が、同時にたくさん笑うようになってきてその目元が本当に暁人にそっくりで可愛らしくて愛しくて、笑ってしまう。
ガチャっと暁人がリビングのドアを開けて帰ってきた。
「あ、おかえりなさい。早かったね」
「うん、ちょっと食べたらまた会社行く」
「えー…」
「あ、唯の離乳食まだ?あげてい?」
「あ、うん」
少しだけ粒の残ったお粥とにんじんをすりつぶしたものが入ったお椀を渡す。
「おー今日は人参のお粥だよー」
そう言う側から唯が、あーんと口を開けて待っているのが見えた。
「唯、ちょっと待ってー。美桜、スプーンとって」
「あ、ごめん!」
渡すと、唯がはやくはやく!と言うように口を開けたまま手でダンダンッとテーブルを叩いた。
「おいしかったかー?」
と、暁人がにこにこしながら唯の頭を撫でて最後にお茶の入ったマグを渡した。
ふと、思いついて
「ねぇ、あっきー」
「うん?」
「え?」
「え?って…うん?あ…?あー!思い出した?」
「うん……」
「本当!?どうやって!?」
「今日香奈子さんと一緒にお墓参り行ったら香奈子さんが、あっきーとかなぶんって…」
「うん。ははっ、香奈子は俺の子分だからかなぶんって……すごい面白いよな」
「………ごめん…」
あだ名しか知らず、気づけるはずもないのだけど。
「よく覚えててくれたね……」
「まぁね。好きだったからね」
何を言っても言い訳にしかならなそうで、何も言い出せずにいると、
「今日起きてられる?4択目選択肢にある?」
「え……あ……はい……」
「それじゃあその時に思い出話しようか」
いや、ちょっと待って、勢いで答えてしまったけれど、それって今夜……
黙っている私を不思議そうに見守る暁人に
「4択目とか気軽に言わないでくださいよ……そんな簡単な選択肢じゃないですよ」
「えー…」
不満そうに顔をしかめてから抱き寄せられた。
耳元で
「でも今日はあるね?」
ドンッと心臓が跳ねた。
もう一度肯定するのは今更恥ずかしいし、否定してしまいたいがこの心臓の音では気持ちはもう隠せてないと思う。
フンッとそっぽを向いてから
「考えておきます……」
「ふっ……ははっ!うん、良い返事待ってる」
ギュッと力を込めて抱きしめられたあと、さぁまずは美桜の作ってくれたご馳走食べよう、と一緒にキッチンに向かった。
私は……色んな意味で持つのだろうか。
人間万事塞翁が馬。昔の人はよくわかっている。
ついていない人生だと諦めていたのに、何が起こるかわからない。
こんなに気持ちが満たされているのは生まれて初めて、暁人からの愛は受け止めるには小さすぎる私の器は溢れてしまって手に負えないものの、唯が少しずつ成長するように、私の器も少しずつ形を変えて大きく広げていきたい。
「暁人さん」
「うん?」
「善処します……」
「うん」
そう言って嬉しそうに頷いた。
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