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せっかく買ってもらったし…と頑張って500mlを全部飲んでほろ酔いで家に帰ると、リビングのソファの上に横になっている暁人がいた。その胸に抱かれてちょこんと唯が丸まって寝ている。
「えっ…」
近寄ると暁人も眠っている。
二人を起こさないように静かに移動しつつ、辺りを見渡すも洋子さんが見つからずダイニングテーブルにメモが置いてあるのを見つけた。
達筆な字で
[美桜さん
本日はお疲れ様でした。
あとは暁人さんにお任せして先においとまさせていただきます。
ご飯ありますので温めてお召し上がりください。
では、また明日。真野]
……暁人さんが唯の面倒を…?
いつの間にそんなことができるようになったのか…小さく驚いてもう一度ソファに近づいて暁人の寝顔の前にしゃがむ。
「暁人さーん…」
密かにささやいた。起こすつもりはない。
閉じたまつ毛の長さと緩く開いた唇から漏れる規則正しい寝息の無防備さに……
唇を合わせてそっと離れた。
離れて、思いもよらない自分の行動に自分でびっくりしてしまった。空腹に一気にアルコールを流し込んだ酔った勢いなのか。
暁人が寝ているからといって、本当に言葉通り悪魔が心を一瞬支配したかのように魔が差して寝込みを襲うようなことをしてしまう自分に混乱していると、
ふっと暁人のまつ毛が動いた。
「……美桜?」
まさか起きるとは、半分パニックになって逃げようと立ちあがろうとしたところを暁人に手首を掴まれた。
「待って……唯をベッドに寝かせて」
「あ、ごめんなさい」
そそくさと寝ている唯を抱き上げてベビーベッドにそっと寝かせた。幸い唯は夜一度寝ると起きない。
「大丈夫?寝てる?」
背後から暁人がベッドを覗き込んだ。
「ありがとうございます。寝かしつけてもらって…」
「いや結局一緒に寝てしまった。寝かしつけられたのはこっちかも」
「なんですかそれ」
「ところで美桜」
「…?」
呼ばれて振り向くとすぐ近くに暁人の顔があり、驚いて後ずさりたくもベッドで動けない。そのまま横に一歩逸れてみたものの、その分一歩暁人が近づく。
「さっきのあれは、なに?」
「あれ……とは……?」
ドキッとした。暁人の目が見られず視線を外した。
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