とある3月

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 それから私の車を使って二人で植物園に向かおうと提案して、運転席の方に向かう私に 「運転しようか?」 「いいですよ、私の車ですし。運転も好きなんで」  植物園に着いてまず真っ先に向かったのが、 ショッキングピンクの鮮やかなフリルが重なるブーゲンビリアを8メートルにも及ぶタワー全面に植えてある広場。  その圧巻の光景を二人で眺めながら彼が感嘆の声を上げた。 「すごい!目が覚める色だな」 「本当に。南国の花の色は元気が出ますね」  うん、と楽しそう頷いた仕草が子供のようで微笑ましく親しみやすさを覚えた。  さらに園内を散策して、天空に向かって一斉に伸びるユスラヤシの並木道を通り、飲み物を買って二人ベンチに座って辺り一面をオレンジに染める暮れ行く夕日の壮大な景色を眺めた。  しばらく無言の後、彼が 「すごい、やっぱり沖縄の夕日は迫力が違うな……感動する……」 「そうですよね、私もこの大空に広がるブルーグレーとオレンジのグラデーションはずっと見てても飽きませんね。夜になるのが惜しい……」  それももう見納めだ。  東京での出来事をリセットしたくて頑張った3年だった。本当に脇目も振らずに仕事に邁進した、楽しかったけど東京を恋しく思うこともあった。  ふっと気が緩んで涙が一筋流れてしまった。  とっさに気づかれないように髪で隠してスッと拭いて 「誘ってもらってありがとうございます」 「こちらこそ教えてもらって良かった。こんな美しい景色を共有できて良かった。一人では……この壮大さはちょっと耐えらなかったかも」 「そんな、車出しただけで」  ちょうど園内に閉園を告げる放送が流れた。 「そろそろ帰りますか。ホテルまで送りますよ」 「もうそんな時間か……」  そう呟き、名残惜しそうにゆっくりベンチから立ち上がった。  
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