そして7月

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 そっと、離れていった。  暁人の表情は抱いた唯を見ていてあまりわからない。 「……美桜。前にも言ったけど、打算的な結婚をするなら美桜は選ばない」 「はい……」 「あと、生きてきた世界とか場所とか言うけど。会社の応接室に飾ってある花も美桜が家が飾ってくれる花も何も変わりないじゃないか。俺は唯のミルクの匂いが好きだし、離乳食始めるのも楽しみしてた。それって世の中の親共通だろ。初めてパパって言われたのも嬉しいし、好きな人とキスすると嬉しくなるのも人類共通じゃないの」  唯に微笑みながら「ねー?」と同意を求めるように首を傾げた。  自然にパパと言っていたことに気づいてハッとした。気持ちは決まっていたはずなのに、いろんなことがあって余計なことを考えすぎていたのかもしれない……  確かに、暁人はずっとそう言ってくれていたー…私はずっと拘って、捻くれて、引け目を感じていただけだったのかもしれない。 「婚約の話は親同士の冗談みたいなもんだし、親同士はわかってくれてこれは片付いたから。玲奈にも話入ってるはず。そのせいで不安にさせていたんならごめん。でもずっと言ってるよね、俺は美桜が好きで、結婚できて、なにも後悔なんてしてないし幸せだ」  唯の手を触りながら 「美桜はそうじゃないの、俺より他にいい奴がいた?」 「い、いない!いないです!」 「俺のことが嫌い?」 「そ、そんなことない……」 「じゃあ、好き?」  絡む視線に、急にドキドキして、答えはひとつしかないのに、声が出ない。  そんな私の様子を見て、暁人がふっと笑った。 「ミルクはあげた」 「あ……はい」 「次は?」 「次?」 「そう次」 「なに?」  分からず首を傾げて考えていると 「自分で考えて」  と唯を渡されて風呂入る、と浴室に向かっていった、去り際に振り向いて、 「先に風呂入ってくる」  あ、この流れは…… 「4択目の……」  心配事は解消された。  暁人の本音も改めて聞くことができた。  その暁人の言葉は信じられる。  暁人を信じる、と決めた以上、以前の繋ぎ止めたいとかそんな邪心はない。  心の準備はできている。  ただ、純粋に暁人に抱かれたい。  
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