そして7月

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 コンコン、とバスルームのすりガラスをそっとノックする、しばらくしてジャーっと流れていた水音が消えた。  ドア越しに声をかける。 「暁人さん」 「うん……」  とくぐもった返事が聞こえた。 「一緒に入っても……?」 「……唯は?大丈夫?」 「ミルク飲んで寝ちゃいました」 「うん……おいで」  ドアを開けるとフワッと湯気が漂う中に暁人が立っていた。 「美桜」  抱きしめられ、素肌の感覚に一気に鼓動が早くなるのがわかった。 「暁人さん」 「あきって呼んで」 「あき?」 「うん」 「あの、さっき言えなかったんですけど」 「うん?」 「……好き、です。ちゃんと」  嬉しそうな声と同時にギュッと抱きしめる腕に力が入った。暁人の早い鼓動が心地良く聞こえる。 「俺のこと好きって……本当?」 「はい」 「本当の本当に?」 「……嘘つかないですよ、そんな大事なこと」 「すごい……奇跡だ……」 「大げさ…」  抱きしめられる腕が離れて我慢できないと言わんばかりなら唇を押し付けられて舌が絡まった。  息苦しくて逃げようと舌を引っ込めようとしたらまた吸い出されるを繰り返されて身体中の力が抜けていく。 「はぁっくるしっ……」 「美桜っ……」 ガクッと膝の力が抜けるも暁人にグッと抱き寄せられた、お腹の下の方に硬いものが当たる感覚に湿度の高い浴室内の熱にうかされたのかそっと触った。  暁人がビクッと反応する 「美桜……ごめん。ちょっと……」 「あっごめんなさい……」 「いや……ごめん、全然我慢できない。する気もないんだけど」  暁人の手が滑り降りてきて私の脚の間を指で弄る。 「っ……んんっ」  脚に力が入らずガクッと後ろ手で身体を支えた拍子にシャワー栓を押してしまったようで二人にシャワーが容赦なく降り注ぐ。 「美桜、後ろ向いて」  ゆっくり後ろから突き上げる感覚に震える声が漏れたがシャワーの音に掻き消された。  どこもかしこもグチャグチャになりながら、水音が響く浴室では声が気にならなくなり本能の声が漏れる。 「あぁっ……あきっっもうっ……いっ……」 「うん……俺も」 「っ……んんっ」  ツラっと太腿にかかった熱いものがそのままシャワーに流されていくのを感じながら、涙なのかお湯なのかで滲む瞳で暁人を見つめると荒い息を整えた暁人が私の顔に張り付いた髪を撫でて 「ベッドいこ……」  耳元で囁いた。
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