そして7月

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 事後ー…  暁人が唯と3人で寝たい、というので私の部屋に移動してベッドに入った途端後ろから抱きしめられて 「そういえば…」  とうなじにキスをしながら話し始めた。 「香奈子が明日父親が半休取ってるって言ってたな」 「お父さん……て社長……ですよね」 「そう。……なるほど、あいつ本当できるな…」 「え?」 「本当急で悪いんだけど、明日実家連れて行ってい?唯も。顔見せたい」 「……」  馬の骨の正体を晒しに…  一気に緊張してきてしまって黙っていると。 「大丈夫、確かに仕事の鬼だけど、人としては鬼じゃないから。なんなら父親も洋子さんに育てられたみたいなとこあるから、洋子さん味方についてくれてるし大丈夫」  どうやら話を聞く限り洋子さんは廣瀬ビル創業者である暁人のお爺さんの秘書だったらしい。  何者なんだ……真野家。  いつのまにか暁人の手がスルスルっとせっかく付け直したブラを外して私の胸を弄っていて 「もうっ……」 「もうちょっと、触るだけ……」 「もう……」 「舐めてい?」 「だめ!」 「んー…」  不満そうに唸る暁人に吹き出してしまった。 「ちょっと、なんなんですか。廣瀬暁人のイメージ覆りすぎ」 「え、俺のイメージなに?」 「愛想のない挨拶もできないやな奴」 「え!?!挨拶?あ…あー…」  思い当たる節があるらしい、やっと思い出したかと笑っていると 「たまに美桜が装花してるの見かける度にどうやって声をかけようか緊張して……挨拶もうまく出来なくて……」  そっかあのしかめっ面は緊張だったのか、でも挨拶無視しなくてもいいのに…  そう思うと可愛く思えてきた。 「最近見かけないって日が続いて、たまたまいたスタッフのひとりに聞いたら地方に異動したって聞いて、あー…終わった、って本当自分の不甲斐なさにがっかりしたよ。早く声かければ良かったって」 「そう……」 「それで出張で地方行くたびひたすらユーフラワーが入ってるホテルとか店回ってて……たまたま休暇で行った沖縄で見つけたのは本当感動したな。でも美桜全然気づいてなさそうだし、追々話していけばいいかと思ったのに次の日朝起きたらいないし…」 「あの日ホテル出勤最終日で、朝また昨日と同じ格好でホテルの知り合いに会うのやだったんで、早めに出たんですよ」 「どうりで……ホテル中探してもいないはずだ。たまに本麻木パークのお店に戻ってきてないか見に行っててよかった。それで美桜にぶつかったのは奇跡だったな。そしたら赤ちゃんだっこしてて……俺の子かもわからないし、他の男との子かもしれないって……。また、あー終わったって本当つくづく自分の不甲斐なさにがっかりしたよ」  あの時の「子供いたのか」と鼻で笑ったのは私への嘲笑かと思ったけれど、自分を嘲った笑いだったのか……  わかりづらい人だな…… 「でも俺の子だったなんて本当奇跡の連続だったな。とりあえず離したくなくて結婚を申し込んで本当に良かった…」 「なんかすごいね、偶然が重なって」  ふふっと苦笑いすると暁人がうなじから首筋にキスしながら 「でも俺もっと前から美桜のこと知ってたけど。まぁ美桜は覚えてないと思うけど……」 「え、あきが私を?」 「昔、美桜の実家の花屋に行ったことがある」 「え……」 「その時から……初恋なんだ美桜が。だから受付装花してる美桜見つけた時心臓飛び出るかと思った。沖縄の時も」  驚いて振り向くとキスされた。 「だから大事にします。いろいろ順番グチャグチャだけど、一個一個きちんとやろう」  胸から手を外してそっと左手を取って薬指を触りながら 「明日、指輪も見に行こう」 「あんまり高くないやつで……」  馬の骨がハイブランドのお店に入るには気が引ける。 「?ハリーウィンスタンかティファミーとか回ろうと思ってたけど、いや?」  とんだ典型的セレブっぷりにもうこちらも麻痺してきて 「じゃあオーダーしたいです。オリジナルの、世界に一個しかないやつ」 「なるほど。うん、それはいいね」  暁人が背中越しに嬉しそうに微笑んだのが空気を通して伝わってきた。
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