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手にしている筆を遊ばせている栗原の様はまさに子ども。
1人じゃ何もできない。
ただ絵を描くことだけに恵まれた男。
「もう知らないわ、トウゴと約束があるの」
18時からお店をとって久しぶりに2人でディナー。
すごく楽しみにしている彼氏とのデート。こんな最低男に構ってられない。
「行くなよ」
栗原に手首を掴まれ立ち止まる。
振り向いて睨む。
「ふざけてるの?私はアンタの為に何十時間プライベートを潰せばいいわけ?」
「その分の報酬は会社に払ってじゃん。モデル、ミナトがいないからなれよ」
栗原に見つめられると言葉が出なくなる。
スキじゃない。
たぶん、モデルやってる女たちは、こう言う栗原に惹かれるのだろう。
でも私は惹かれない。
「ふざけてないで、今描いてる絵を仕上げなさいよ。担当者が締め切りギリギリで嘆いていたわ」
「はいはい」
私は栗原のアトリエを出た。
「ゴメン、遅くなって」
「いいよ、どうせあの天才君のとこだろ」
予約していた店に着いたのは18時ギリギリ。
トウゴは諦め顔で私を見ている。
「行こう」
「うん」
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