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トウゴとはレストランで別れた。
明日も仕事で忙しいんだって。
もう私たち終わってるのかな?
一週間前も喧嘩したし、会話も全然続かない。
ドキドキすることも無くなったし、トウゴにとって私ってどんな存在?
わからなくて、不安で潰されそうになって、なぜか栗原の顔が浮かんだ。
悪態をついても私は栗原を友だちだとは思っている。
「なに?忙しいんだけど」
「別に……」
ひたすらキャンパスに向かっている栗原は真剣そのもの。
睨みつけるようにギラギラとした瞳で唇をキッと引き結ぶ。
整っている顔に、無精髭を生やし、髪はグシャグシャ。
典型的な衣服に頓着しない、周りの目も気にしない、どんな行動を取ろうと誰が泣こうと気にしない、最低ダメダメ男。
「なんだっていいじゃん」
誰でもよかった。
ただ足が勝手に栗原のアトリエに向かってしまった。
側にいてくれるなら誰でもよかった、それが栗原じゃなくても。
「また抱かれに来たの?この間はトウゴさんとケンカした日だったね。またケンカ?」
「なんでもいいでしょ?“男は穴があったら入りたい“ってアンタの口癖じゃなかった?」
興味ないと言いたげに栗原は私を見てはくれない。
私はいろんな気持ちがごちゃ混ぜになって、目から雫が溢れた。
次々に流れてくる涙を手で拭う。
栗原と出会ってからトウゴといざこざがあるたびに、栗原は私を慰めてくれた。そしていつの間にか栗原に抱かれてた。
頭の中の呪文は「これで最後」。でも最後なんて毎回なかった。
栗原が私の家に転がり込んできた時期には、毎回求められてそれに応えた。
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