確かに恋だった。ー曜日女になれない女ー

9/12
前へ
/12ページ
次へ
けど大学の時は人物画なんて描かなかったし、絵を描くことと、サークルで遊ぶことに夢中ってかんじで相手にもされなかった。 トウゴの優しさに惹かれて、トウゴは私が栗原を好きって知ってたの。 それでも私を好きだから待ってくれて、そんなトウゴの優しさが嬉しくて、私もトウゴの気持ちに応えたいって思った。 付き合いだして2年。 仕事も恋愛もそこそこ上手くいってた時に、栗原と再会した。 ゆるいパーマの茶髪、無精髭、死んだ魚のような生気のない暗い瞳。いかにもホストって服装の栗原と目線が合った時、火花が飛び散った気がした。 大学の時に好きだった残滓だろうか。 お互いその場は知らないフリをした。 それで終わるはずだったのに。 市内にある小さなイベントホールを使って何かしてくれと依頼が来たのはその直後。 たまたま手の空いていた私が担当になった。 すぐに栗原が私の頭に浮かんでた。 1カケラに満たない恋心は私を突き動かした。 トウゴにイベントの話をすると喜んでくれて私も嬉しくなった。 イベントは大成功に終わって、栗原ともそれきりのハズだった。 でも栗原の方から私にちょくちょく連絡が来るようになってて。 「ご飯作って」「洗濯して」「髪がまとまらない」 小さいことで私はプライベートの時間に呼び出された。 まるで都合の良い家政婦みたいに。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加