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「入りたまえ」
私がそう返事をすると燕尾服を来た黒髪で長身の男が入ってくる。彼はアルカード・ハングドマン。私の執事だ。アルカードは丁寧に扉を閉じると私に一礼した。
「おはようございます。お嬢様」
「おはようアル君。なかなか起こしに来てくれないから先に起きてしまったよ」
「申し訳ございません」
抑揚の無い声でアルカードは良い訳もせず詫びる。彼はいつもそうだ。いかなる時もポーカーフェイス崩さず他人に、いや主人である私にさえあまり感情を表に出そうとしない。
「いいんだ。終わったことを気に病むことはない。だがそうだな.....」
そう顎に手をあてて言いながら私はニヤリと笑った。
「失敗で失った信用は元には戻らない。何か挽回をするべきだろう。そうは思わないかね?」
本来ならばここまで言うほどの事例ではない。母親に起こしてもらえなかったお子様じゃあるまいしな。だがまぁこれはちょっとした余興だ。たまにはアルカードがありのままの感情を表に出すところが見てみたい。
「そうですね」
アルカードは少し俯きながらそう応えた。そうそう、いい調子だ。
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