Ep1−1 吸血令嬢と一日の始まり

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「入りたまえ」 私がそう返事をすると燕尾服を来た黒髪で長身の男が入ってくる。彼はアルカード・ハングドマン。私の執事だ。アルカードは丁寧に扉を閉じると私に一礼した。 「おはようございます。お嬢様」 「おはようアル君。なかなか起こしに来てくれないから先に起きてしまったよ」 「申し訳ございません」 抑揚の無い声でアルカードは良い訳もせず詫びる。彼はいつもそうだ。いかなる時もポーカーフェイス崩さず他人に、いや主人である私にさえあまり感情を表に出そうとしない。 「いいんだ。終わったことを気に病むことはない。だがそうだな.....」 そう顎に手をあてて言いながら私はニヤリと笑った。 「失敗で失った信用は元には戻らない。何か挽回をするべきだろう。そうは思わないかね?」 本来ならばここまで言うほどの事例ではない。母親に起こしてもらえなかったお子様じゃあるまいしな。だがまぁこれはちょっとした余興だ。たまにはアルカードがありのままの感情を表に出すところが見てみたい。 「そうですね」 アルカードは少し俯きながらそう応えた。そうそう、いい調子だ。
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