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pregando(祈るように)
次の日。
コンクール当日。
テレビは付いていない。
昨夜は大して眠れず寝返りばかりで、朝は朝で、夏の日差しが容赦なくカーテン越しにも照りつけるから、観念して、早くに起き出し準備した。
午前7時の集合なので、玄関を開けるため15分ほど早く学校に着いた。
しかし、既に事務長が来て開けてくれていて、一緒に楽器運びと、コンクール聴きに行くと言ってくれた。
さらに、丸山ちゃんも来て、今日は事務長と一緒に手伝います、と笑ってくれた。
事務室前で三人で話していたら、梶浦君が一番に登校してきた。
そして、私と音楽室へと向かいながら話し出した。
「昨日、あの後みんなで話し合いました。」
「えっ、部活の後?」
「はい、吹部LINEで。
で、僕らの結論は、神崎さんに目にもの見せてやる、というか、聴かせてやるってことになりました。」
「ふふっ、何か物騒な言い方ね。」
「・・・先生、顔色悪いです。」
「あー、緊張してるからかなあ。」
「先生達も、何かあの後話したんですか?」
「うん?特には話してないよ。」
「ふーん。先生、先生気づいていたと思いますが、僕、先生のこと嫌いでした。」
「うん。」
「で、これは気づいていないと思いますが、今は先生のこと好きですよ。」
「うん?」
「だから、僕が、思い知らせますよ、先生にも音楽は楽しいってこと。指揮していて楽しいって思わせます。」
「うん。」
生意気な生徒に励まされた。
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